そしてコミュ力も高いときた。

本当にどこもかしこも完璧な人を前にすると、ドキドキよりも憧れや尊敬が勝つんだなぁ…。


何故か一緒の方向へ向かっている私達は、他愛もない話を交えていて。



「わかりますっ。私も今日はあることがあって待ち遠しくてウズウズしちゃってて」


「同じだ。…妹にね、会えるんだ」


「え!奇遇ですね!実は私も兄に会うんです!」



こんな偶然があるのか。

妹さんとはあまり会えない距離に居るとかなのかな…?

例えば入院がちだとか。


それぞれ家庭の複雑な事情というものがあるから、あまり掘り下げない方が良さそうだ。



「……へぇ」



あれ、一瞬先輩の雰囲気が黒いオーラに包まれたような……。

まぁ気のせいか。


羽柴 湊(はしば みなと)。


名前まで格好いいだなんて恵まれ過ぎててすごい。

爽やかだ、すっごい爽やか。
緑いっぱいの草原みたいな名前…。


それに優しい彼にぴったりだと思った。



「じゃあうちここなので…今日は色々ありがとうございました!」



静かな住宅地に入ってから何棟目かの一戸建ての前、私はペコッと頭を下げた。

お兄ちゃんとなってくれる人に会うドキドキ感と、生徒会長と一緒に帰宅してしまった優越感がやっと少しずつ追い付いてきた。