事態が変化し始めたのは一週間後くらいからだった。


「大智、今日の放課後どうする?」


隣りのクラスの大智に声をかけた時、大智は一瞬あたしから視線をそらせた。


ん? 


あたしの気のせい?


怪訝に思って首をかしげると大智はすぐにいつもの笑顔になった。


「ごめん。今日はちょっと用事があるんだ」


顔の前で両手を合わせて謝る大智。


「えぇ? 聞いてないよ?」


「悪い。急に親から連絡入ってさ、親父が熱出して会社早退したらしいんだ。俺、学校終わったらすぐに帰って様子を見なきゃいけなくなったんだ」


確か、大智の家は共働きだと言っていた。


お母さんも今日は仕事に出ているのだろう。


それなら仕方ないことだった。


なにより、大智に我ままを言って嫌われたくはない。


「わかった。お大事にって伝えておいてね」


あたしはそう言い、自分の教室へと戻ったのだった。


その日はそれで終わった。


だけど、放課後のデートはその後も何度も流れることになった。


「ねぇ大智、今日のお昼御飯なんだけど」


「悪い。今日は友達と食べるんだ」


あたしがまだ話をしている途中で、大智は言った。


あたしとは目も合わせず、スマホを見つめている。