……本当に、間に合ったんだ。
安堵の息をついて、遠慮がちに隣に座った私は彼を見つめる。
「ね?」
そう言いながら、さっきと変わらない気だるげな口調で漏らした彼は、ふと私を見つめ返した。
「間に合ったろ?」
しっかり目と目が合えば、彼が淡く微笑んだ。
男の子に手を引かれてこんなに全力で走ったのは初めてで、その微笑みにしばらく見惚れていた。
私はその瞬間、恋に落ちたと思う。
だから……
「──髪伸びたね。こっちの方がいい」
「……っ、」
入学式で律くんの姿を見つけた時、目を奪われてしばらく動けなかった。
先に口を開いたのは律くんで。
自分でも初めて感じる気持ちに戸惑って。
それと同時に再会出来たことが何よりも嬉しかった。
私はそれから、ずっと髪を伸ばしている。



