髪もボサボサだし、寝癖もひどい。

だけど、形振り構っていられないし、とにかく走らなきゃ!


それは自己ベストを塗り替えるほどの記録を出さないと間に合わないかもしれない!


「ハァッ───もう、走れない……」


突き刺す二月の寒さ。

ただでさえ足が遅い上に、間に合わないかもしれないという焦りもあって、諦めてしまいそうになる……。


昨日は緊張で眠れなかった。



「間に合わない……入試、ダメかも……」


情けない自分がいけないけれど、乱れる呼吸と同時に涙が込み上げてくる。


「──走んないの?」


その時だった。

ガックリと膝から崩れ落ちそうな私に舞い込んできた低い声。