たぶん、私の人生の中で過去一を誇るスピードだったと思う。



「……羽川ってさ、全力女子とか嫌いなんじゃなかったのか?」


「アイツはそこが可愛いんだよ。言ってやんないけど」


「……いやそれは言ってやれよ。喜ぶだろ」


「ダメ。喜びすぎると走り出してどっかいっちゃうから」


「……言わなくてももう走り出してんだろ。なに言ったんだよ」


「矢坂、頼みなんだけど傘なくなったらからいれて」


「……頼みってそれかよ!! なんで俺がお前と相合傘しなきゃなんねぇんだ。ちくしょう……」


私はふたりの会話なんて聞こえるはずもなく、傘をぶんぶん揺らして自宅へまっしぐら。

律くんがくれたティラミスまんだけは、雨に濡れないように。