すると律くんは、傘立てに置いてある青い傘を手に取った。


「さすが律くんだね! 天気予報見て、ちゃんと持ってきてるんだもん!」


「これ5日前から置いてあるだけ」


「そ、そんな前から先読みしてたの!?」


「普通に忘れてるだけってわかんないのか……」


超能力とかないから、と……やれやれといった表情の律くんと昇降口を出ようとしたところで、


「……ちょっと待って!?」


私はピタリと一時停止する。


「なに、忘れもん? 寒いから早くして」


傘を忘れた私と、傘を持つ律くん……。


「この展開は……っ」


「って言われても、俺は雨の予報も芽衣の頭ん中も読めないからね」


「わ、私……実は傘ないから……だからその……」


淡い期待を胸に律くんと傘を交互に見る。