「確かに俺は全力とか嫌い。けどあの日も、芽衣が俺を走らせたんでしょ?」
「……私が?」
「そう。入学式で芽衣のこと見つけた時、諦めなくてよかったって思った」
それは私も同じ気持ちだよ、律くん。
あの時、律くんが私の手を拾い上げてくれたから。
「そんな風に思ったのも初めてだし、たぶん俺、矢坂が菊池のこと見てるよりお前のこと見てたけど」
「え!? それはつまり、週4以上の尾行を……?」
「……そこは一緒にすんな」
ピシッとおでこを指で弾かれた。
「なのにお前は俺の話最後まで聞かないで走り出すし」
「ご、ごめんなさい……」
肩を縮めて律くんを見上げれば、穏やかな瞳が返された。



