もう胸がいっぱいで、律くんの後ろ姿がぼやけてきて……。


「……っ、」


泣きたくないのに、涙が勝手に溢れて。

その瞬間、律くんが私の方へ振り返った。


ガタッ!と音を立てて、反射的に椅子から立ち上がった私は、


「……だ、ダメ!」


目が合って、顔を思い切り逸らして。


「ちょっと、芽衣!?」


何がダメなのか自分でもわからない。


「やっぱり俺の脚本がダメだったか……」


気づくと私は涙ぐむ山神様の横を通って、無意識に教室を飛び出していた。



学校を出て走り出した足は止まらなくて、冷たい風が吹き付ける。


止まることなく溢れる涙のせいで、視界は悪くなる一方だった。


全力で走って逃げてきたくせに、私の頭の中は律くんでいっぱいで……。