「そんな律を見ちゃったら、声なんてかけらんなかったの。幼なじみであるわたし以外の女の子の前で、こんな顔するんだって……」


「東雲さん……」


「幼なじみって、結構辛い時もあるのよ? まっ、それが面白くなくて意地悪言ってやりたくなったんだけどね」


「……っ、ちょちょ、痛っ……!」


私の頬っぺたをつねってびろんと引っ張り出した。


暴力反対だ……!


「わたしからも言わせてもらうけど、律のこと傷つけたら許さないから……っ」


わかったの?と……。

私はぶんぶん首を縦に振って、頷いた。


「東雲さん!!」


ステージに向かうお姫様の後ろ姿に、


「シンデレラ、頑張ってね!」


声をかけると、東雲さんはうんと自信たっぷりに頷いて舞台にあがった。


その背中を見送ってから、私もみんなが待つ教室へと歩き出した。