「それでもいいよ」
え……?
そんなセリフ、台本にあった……?
舞台袖にいるみんなも驚いている。
律くん……?
細くなったライトが、舞台の中心に立つ私達を照らした。
「……きゃっ」
その時だった。
律くんが私を抱きしめたのは……。
「記憶がなくても、思い出せなくてもいいよ」
ギュッと私を抱きしめる腕に力がこめられて……。
「──全部、俺が憶えてるから」
「……っ、」
鼓膜を震わす優しい律くんの声に、たちまち目の奥が熱くなった……。
私は、もう限界だったと思う。
客席からは歓声があがって、拍手が送られる。
だけど、私は律くんの胸の中で涙が止まらなかった。



