泣くのは、律くんが去っていったあとのシーンなのに……。 「あなたのこと、何ひとつ覚えていないから……ごめんなさい……」 次は、律くんのセリフだ。 ああ……嫌だな。 劇とはいえ、律くんの口から聞くのは辛い。 記憶をなくしたヒロインに、“君のことが好きだから、別れよう”……って。 ずっと聞きたかった「好き」の言葉と、聞きたくない「別れよう」の言葉。 こんな状況でそれを聞くことになるなんて、神様は意地悪だ……。 律くんがそっと口を開く。 今すぐ、耳を塞いでしまいたい……。