そんな律くんの一面を知った途端、好きな気持ちが沁みるように広がっていった。
後半は時折セリフに詰まったりしたけれど……。
矢坂くんが、セリフを書いた紙を律くんに見せてくれて難を逃れた。
舞台は終盤を迎え、いよいよラストシーンへと差し掛かる。
「私……なにも思い出せないの……」
記憶を失くしたヒロイン役の私の緊張は半端なかった……!
ドキドキ、バクバク、心臓がおかしくなりそうで。
舞台袖で出番を待つ私に「いいことを教えてやろう!」と、山神様が私の手を取った。
少々怯える私の手のひらに“人”という字を三回書いた。
なんの儀式……!?と思ったが緊張しないおまじないだと笑った。



