なんて勝手な言い分だろう。

なんであんなこと言ってしまったんだろう。


私こそ、一度だって「好きって言ってほしい」なんて口にしたことないくせに。


「……っ、」


無我夢中で正門を出ると、真っ暗な空からポツポツと雨が降ってきた。


──“早くおいで?”


いつかの雨の日の帰り道、律くんが私を呼ぶ声が蘇る。

強さを増す雨の中、そっと振り返っても、律くんはいない。


「天気予報、ちゃんと確認するねって言ったのにな……」


一人呟けば、涙まで一緒に零れてきて。

雨が振る中、私は全力で走って帰った。




「……逃げられたら、抱きしめらんないだろ」



きっと、「好き」の言葉はもう聞けない。