フンッ!と私の前髪が乱れるほどの鼻息をかましてステージの脇へとのしのし帰っていった。


あなたは監督か……。

そもそも私がヒロインに立候補したわけじゃないのに……っ。


クラスのみんなの前でそんなことを言えば「無責任だ!」と言われかねないので言わないけれど。


「西宮、役作りはもう十分出来ている。セリフを頭に入れることに専念しよう」


と、やつれた私に少々失礼なことを言ってきたのは会長様だ。

なぜなら、私の相手役が会長様だから。

三年生参加型とはいえ、ヒーロー役を決める時に「こ、ここは俺が引き受けるしかないな……」とやる気満々で挙手した会長様にみんなはドン引きだった。


だけど、台本を手渡されて目をキラキラさせる会長様を見たら、みんな「いいよいいよ、会長で」と異議はなかったのだ。