「あの、律くん、帰ろっか……?」
まだ寝ぼけ眼な律くんが私を見ている。
反応はない。
儚げで、無防備に見えるのはきっと今だけ。
いつもの律くんならば、すぐにでも仕掛けてくるに違いない……。
律くんの瞳から逃げるように、教科書をカバンに閉まっていると、
「人って何かが不足したまま死ぬと成仏出来ないらしいよ」
「成仏!? な、なんの話……? てか……律くん寝ぼけてる!?」
いきなり何を言い出すの!?
「いや。でも意識遠のきそう」
「なんでぇ!?」
省エネモードだったはずじゃ!?
なのにまだ眠いのかなって狼狽える私だったけど、これが律くんの罠の始まり。



