1月。

ある日の午後2時。



「ねぇ、海くんって、学校で生徒の相談に乗ってるんだよね」

「うん」

「俺も相談していい?」

「いいよ。どうした?」



お正月。祖父母の家に家族全員で帰省中。

昼食を終えて部屋でくつろいでいると、10個下の従弟の波瑠磨が話しかけてきた。


波瑠磨が相談なんて珍しい。

彼は迷うことが少なく、思い立ったらすぐ行動するフットワークが軽いタイプなのに。


顔を見ると少し悲しい表情をしている。

何かあったな?



「この前、通りすがりの人達に『チャラい、ヤンキーみたい』って言われた……」



相当ショックだったんだろう、今にも泣き出しそうな表情で弱々しく口を開いた。


波瑠磨は、子どもの頃から厳つい顔にコンプレックスを持っており、地毛は茶色だが、余計怖く見られそうなのを気にして黒く染めている。


今まで怖そうと言われたことはあったものの、見ず知らずの人から言われたのは初めてだったようで……。



「ただ歩いてただけなのに……寒かったからポケットに手を突っ込んでいただけなのに……」

「見ず知らずの人の言葉なんか気にするな」