詳しく聞くと、その彼女が亡くなった後、毎月のように彼女の家に友達と一緒にお参りに行っていたらしい。

気持ちを伝えたくても、一緒に来た友達や彼女の家族がいる手前、なかなか言い出せなかったんだそう。



「本当……女々しすぎますよね。人の恋は応援してるくせに」



涙を拭きながら弱々しく笑う黒瀬くん。

一見、凛々しくて芯が強そうだけど……本当は一途で優しくて繊細だったんだね。



「このままじゃ俺、いつまで経っても次の恋愛に進めないと思うんです。だから乗り越えなきゃ……」

「大丈夫。焦らなくていいから」



彼の肩をポンポンと優しく叩く。



「その彼女、きっと黒瀬くんのこと見守っていると思うよ」

「……そうだといいな」

「むしろ、こんなに彼女のことを思っているんなら、多分気持ち伝わっているんじゃない?」

「…………だとしたらなんか恥ずかしいですね」



そう言って上を指差すと、泣き止んだ彼に笑顔が戻った。



「ありがとうございました。少し心が楽になりました」

「それなら良かった」



彼は最後、笑顔で頭を下げて出ていった。

黒瀬くんが過去を清算して、新しい恋に出会えますように。