恐る恐る尋ねると、彼は少し俯いて小さく頷き……。



「俺、昔からずっと好きだった子がいて。でも、気持ちを伝えられずに彼女は遠くにいってしまったんです」

「遠くって……どれぐらい?」


「…………もう二度と会えない距離です」



切ない表情で語る彼を見て胸が苦しくなった。

二度と会えないということは恐らく……。



「……もう亡くなって3年も経つのに、いまだに好きなんです」

「黒瀬くん……」


「友達がここ最近、毎日のようにその彼女の夢を見てるらしくて。本人は熟睡できてないから疲れてるみたいですけど……俺からしたらすごく羨ましくて……」



「夢でもいいから会いたい……」と俯いて話す彼の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

ティッシュを渡して背中をさする。



「ずっと誰にも言えなかったの?」

「はい……。彼女の弟に『好きな人はいるの?』って聞かれたんですけど……言えませんでした」