「ってか、なんで逃げてるの? 逃げるなって言ったのに」
「逃げてたのは神風くんの方じゃん」
神風くんには言われたくない。
それにわたしは待ってるなんて一言も言ってないんだから。
わたしたち以外に人がいないこの場所に、スマホの着信が鳴り響く。
コンクリートに囲まれているせいか、音が反響して大きく聞こえて、その音に驚いてしまった。
ただの着信音に驚くわたしを見て神風くんはふっと笑う。
そんな神風くんにイラッとするわたし。
なんか子どもに見られているようでムカつく。
「電話出ないの?」
「あぁ、面倒くさいからいい」
「もしかしたら大事な連絡かもしれないじゃん」
電話してくるくらいだし、だいぶ長い間鳴ってるし。
それでも神風くんは出ようとせずに、しばらくして音は止まってしまった。
「……えっ?」
止まったかと思えば、次に着信があったのはわたしのスマホ。
こんな立て続けに電話が来るなんて……
そう疑問に思いつつスマホをポケットから取り出すと、画面には"舞さん"と表示されていた。
神風くんのお姉さんから?
一体なんだろう。
何かに気がついたような神風くんはわたしのことを止めようとしたけれど、その前に通話ボタンを押したのはわたしだった。



