「ねぇ、澪に何してんの? コイツ、困ってんじゃん」
「……っ、神風くん」
何故かわたしのピンチに駆けつけてくれるのは、いつも神風くん。
さっきまでの王子様スマイルはどこにもない。
「へぇ、キミの名前、澪ちゃんって言うんだ。 で、キミは澪ちゃんの彼氏か何か?」
わたしと神風くんを見て、挑発するようにセリフを吐き捨てられた。
神風くんは彼氏なんかじゃない。
そう言い返したかったのに。
「もし、そうだったら?」
神風くんは鋭い視線を向けて、そう言い放った。
そんなの、まるで俺が彼氏ですって言っているようなものじゃない?
違うのに。
むしろ、そんなことありえないし、お断りなのに。
「ふぅん、じゃあ興味無いや。 バイバイ澪ちゃんっ」
本当にしつこい人だった。
やっと大学生の男の人は、人混みの中へと消えていった。
「全く、面倒くさい奴」
わたしを見て、はぁと大きなため息をつく神風くん。
なんだかその態度にはやっぱりムカつくけれど、わたしのことを助けてくれたのは事実。
「……ありがとう」
不本意だったとしても、お礼を言うのが礼儀ってもの。



