「唯斗ってば、見た目と違って案外可愛いところあるでしょ?」



そんな神風くんの姿を見て、舞さんはわたしの耳にそう囁いた。



「性格は悪いけど、嫌いになれないのよねぇ」



あんなに苦手な神風くんだったのに、舞さんのそれに妙に納得してしまった。


性格は最悪なのにどこか優しくて……苦手なのに嫌いになれない。



「あー!もうこんな時間!澪ちゃん遅くまで付き合わせちゃってごめんね?」



舞さんに言われて時計を見ればもう18時を過ぎていた。


秋に近づいている今はもうこの時間はほぼ日が沈んでしまっている。



「いえ、全然大丈夫ですっ」



予め神風くんの家に来て直ぐに帰りが遅くなるとお母さんに連絡を入れて置いたから。



「唯斗ー!責任もって家まで澪ちゃんのこと送ってあげなさい!」


「そ、そんなっ!」


「ほらほら、遠慮しないで?」



舞さんに断ることもできず、神風くんも面倒くさそうにしながらもお姉さんには反抗できず、2人で歩く静かな夜道。


しばらく無言の時間が続いた。