舞さんに呼ばれて施されたのは、わたしに全く縁がなかったメイク。


下地を塗られて、ファンデーションを重ねて、目元、頬、口元……


慣れないことに緊張する。


20分くらい経っただろうか?



「あーっ、もう可愛すぎてどうしよう!」



テンションが上がりきった舞さんはずっとキャーキャーとわたしを見て叫んでいる。


手渡された手鏡を見て、わたしは固まった。


本当に魔法にかけられたお姫様のよう。


わたしじゃない、わたし。



「……んだよ、うるさいな」



わたしが鏡に映る自分を見て放心状態になっていると、ダルそうに自室から出てきた神風くん。



「唯斗!いいところに来た!ほら、見て澪ちゃんっ」



舞さんは固まったまま動かないわたしの体をグイッと動かして、神風くんと向かい合わせにした。



「へぇー、どうなったの澪……っ」


「どうよ、唯斗。澪ちゃん、めちゃくちゃ可愛くなったでしょ?」


「……神風くん?」



わたし以上に固まってしまったのは神風くん。


やっぱり、変だったかな。


舞さんに良くしてもらって、調子に乗りすぎたかな。



「……まぁ、いいんじゃない?」


「……っ」



見間違い?


そうじゃなければ、神風くんの頬がちょっぴり赤く見えた気がする。