カラー剤が落ち着くまでの間、舞さんは神風くんのいろいろなことを話してくれた。
神風くんと舞さんの両親はお父さんの転勤で海外にいるらしい。
お母さんもついていくことになって日本に残された神風くんは、舞さんの家に一緒に住むことになり、たまたま近くにあったわたしも通う高校に転校してきたのだと教えてくれた。
「うん、いい感じに染まってるね! じゃあ流すからお風呂までお願いしまーす!」
陽気な舞さんに連れられてお風呂のシャワーで髪を洗ってもらう。
髪を乾かす時には、「どんな感じになったかはあとのお楽しみねっ」と鏡は見せてくれなかった。
自分の姿はどう変わったのか……気になってソワソワする。
舞さんに丁寧に乾かしてもらった髪の毛は、自分でするよりもすごくサラサラになっていて、手ぐしを通しただけで感動した。
「ちょっと髪の毛切っても大丈夫?」
リビングの椅子まで戻ってきてからそう聞かれた。
舞さんが手をかけていたのは、わたしの前髪。
人と関わるのが苦手で、なるべく目が合わないようにと伸ばしていた。
「……えっと、これは……」
「きっとね、見える世界が変わると思うよ?」
引っ込み事案なわたしの気持ちを知ってか知らずか、舞さんは不思議と前向きになれそうな言葉をかけてくれる。
そんな舞さんに、わたしは静かに首を縦に振った。



