「唯斗おかえり……って、誰!? もしかして彼女!?」
「……っ!?」
ドアが開くとほぼ同時に部屋の奥から聞こえてきたお姉さんの声。
ひょっこりと顔を出したお姉さんとバッチリ目が合って、身を乗り出すように大きな声をだしたお姉さんにびっくりする。
「なぁ、コイツどうにかしてやってくれない?美容師の姉ちゃんならお手の物でしょ」
「……え?」
そう言いながら靴を脱いでわたしを玄関に置いたまま家の中へと入り、自分の部屋であろうドアの奥に消えた神風くん。
目の前で次々と起こる展開に全くついていけず、ただただ目を丸くして立ち尽くすわたし。
「本当生意気なんだから。まぁ可愛い弟と彼女のためなら一肌脱いであげようじゃないの」
お姉さんは、はぁとため息を漏らしながらもポンと胸を叩いてわたしを見た。
「唯斗の彼女さん、お名前は?」
「あぁっ、えっと……」
まずはお姉さんの誤解を解かなくちゃ。
「わたし、神風くんの彼女じゃないです……あ、えっと、名前は七瀬 澪って言います」
「あれ、そうなの? 澪ちゃんねー! もうそんなに緊張しちゃって……可愛すぎるっ」
「か、かわっ……そんなことないです!」
可愛いなんてそんなこと言われたことない。
慣れないことを言われて、戸惑いが隠せない。
「そんなことあるある! あ、わたしの名前は舞よろしくね!」
舞さんは、神風くんとよく似て顔立ちが整っていて美人。
すらっとした背で、かっこいい明るくフレンドリーなお姉さんだった。



