「澪ー」
上から聞こえてきた、わたしを呼ぶ声。
わたしの好きな、素っ気ないけれど優しい唯斗くんの声。
3階からなのに、あまり大きくないその声ははっきり聞こえた。
たぶん、ここがすごく静かな住宅街だから。
「唯斗くーん」
それに答えるように大きく手を振ってアピールする。
……って、そうじゃなくて。
「部屋番号忘れちゃって……何号室だっけ?」
「307」
「わかった、今行くね!」
早く唯斗くんに会いたい。
無意識に早足になる。
アパートにはエレベーターはなくて、階段で登らなければいけないのだけど、3階までの地味に長い階段も足取りが軽くて、あっという間にたどり着いた。
「澪、こっち」
3階に着くと、ドアからひょっこりと唯斗くんが顔を出して待っている。
そんなちょっとしたことだけれど、嬉しくなってしまうわたしはすごく単純だ。



