「最悪、カバン忘れた」



神風くんは自分の周りを見て忘れ物に気がついたらしく、気だるそうにため息をついている。


ため息をつきたいのはわたしの方だ。


こんなに神風くんに振り回されて。



「んじゃ、また明日……あ、」



振り回した挙句、適当に置いて帰るのかと呆れているとわたしの方へ振り向いて目が合う。



「ねぇ、もう少し笑ったら? その方が可愛いよ」



神風くんはフッと笑ってから、背を向けて行ってしまった。


余計なお世話だ。


そんな言葉も神風くんには届かず、胸の中に消えていく。



「あ……わたしも教室戻らなきゃ」



帰る準備をしている時に突然連れ出されたから、わたしのカバンも教室に置きっぱなし。


神風くんがもういなくなっているといいんだけど。


恐る恐る教室に戻ると教室には誰もおらず、神風くんの机にカバンも無くなっていた。


それを確認してホッと胸をなでおろす。






わたし、神風くんのこと苦手かも。


わたしのことを利用してるところとか、会ったばかりで何も知らないはずなのに全て見透かされているような気分になってしまうところとか。




全部苦手。




これ以上面倒事に巻き込まれるのも嫌だし、神風くんとは距離を置くようにしよう。


そう心に決めた。