「何言ってんの?」



悔しそうに唇を噛むわたしに、神風くんはあきれた顔をする。



「俺がお前を変えてやるって言ったのに、俺から言ったら意味ないじゃん」



……だから?


わたしから気持ちを言うのを待ってたの?



やや早足な神風くんに、わたしは置いてかれないよう必死について行く。



「じゃあ、これからは俺のこと唯斗って呼んで?」


「えっ、突然そんなこと言われても……!」



また神風くんは突拍子もないことを言い始める。


だって、まだ返事もしてもらってないし、すぐに呼び方を変えるなんて無理だよ。


わたしは困惑しているというのに、神風くんはわたしの家に向かって歩き続ける。



「ねぇ、神風くっ……」


「唯斗、でしょ」



突然足を止めたかと思えば、わたしの唇に添えられる神風くんの人差し指。



「ゆ、唯斗……くん」


「そう」



わたしが神風くんの名前を口にすると、満足そうに笑った。



「好きだよ、澪」


「……っ!」



好きな人と想いが通じることが、こんなにも嬉しいことなんだって、わたしは初めて知った。