目の前には、本当に聞こえていなかったのか不思議そうな顔をする神風くん。
今、わたしなんて言った?
「いや、なんでもな……」
恥ずかしくて、誤魔化そうとした。
でもこのまま伝えなかったら、今までの気持ちを押し殺してきた自分と同じ。
玲奈ちゃんにも言われたんだ。
口で伝えないと伝わらないこともたくさんあるんだって。
「わたし……ね、」
「ん?」
神風くんは足を止めずに歩き続ける。
真剣に面と向かって言うより、そうしてくれた方が伝えやすい。
それが今のわたしにはありがたかった。
「神風くんに伝えたいことがあるの」
「ん」
返事は素っ気なくても、ちゃんとわたしの声に耳を傾けてくれている。
「わたし、神風くんのことが好き」



