「ほら、早く行くよー」


「いや、ちょっと待ってよ」



グイッと腕を引かれて、無理矢理連れて行かれる。


後ろではキャーっと短い悲鳴のような声も聞こえた。


イケメンにいきなり連れ出されるシチュエーションはよくある恋愛ストーリーに出て来がち。


そして、それに憧れる女の子も多い。


それがまさに今。


いやいや、わたしは全く興味ないし、むしろやめて欲しい。



「ねぇ、どこまで……」



教室を出てだいぶ歩いたけど、ずっと神風くんに引かれながら歩いてきて、これじゃまるでわたしが案内しているみたい。



「ごめんごめん、取り巻き振り払うのに夢中になってたわ」


「え?」



取り巻きを振り払う?


校内案内をして欲しいっていうのは嘘?


やっと掴んでいた手を離してくれたけど、今度は意味のわからないことを言い出した。


しかもさっきまでの爽やかスマイルはどこへやら。


あなたは誰?と思ってしまうくらい不敵な笑みを浮かべている神風くんにわたしは戸惑いを隠せない。



「あー、びっくりしてる?これが普段の俺だから」



普段の俺?


クラスで見たあのニコニコと笑顔を振りまく人気者の神風くんは作られた偽物で、今の笑顔なんて皆無で不機嫌そうな神風くんが本当の神風くんってこと?