「避けられるのはさすがに寂しいんだけど」



なんで、そんなこと言うの?


神風くんから向けられる視線は真っ直ぐで、目を逸らすことができないくらいに絡みついてくる。



「神風!」


「何ー?」



神風くんは友達に呼ばれて、やっとわたしから離れていった。



「……ふぅ」



助かった。


胸のドキドキが聞こえてしまわないか心配になるくらい神風くんに見つめられて、おかしくなってしまいそうだったから。


最近は授業だってままならない。



「次、七瀬、続きから読んで」


「はい」



現代文の授業だって、名前を呼ばれたから反射的に返事をして立ち上がったけれど、前の人がどこまで読んでいたのかわからない。



「47ページの5行目から」



困っていると、神風くんが小声で教えてくれて、何とかその場を切り抜けることができた。