"追試に合格したら、神風くんのお願いを聞く"



そんな約束をしてしまったから。


神風くんは満点を取っているかもしれない。


でも、もしかしたらまた面倒くさいとサボっているかもしれない。


そんな僅かな希望を抱いて待っていた。



「……結果は……?」



追試はすぐに採点して返してくれるから、もう合否がわかっているはず。



「もちろん……はい」



ガサゴソとカバンの中から取り出した、変な折り目がついてしまっている紙を見せられる。


そこにはやっぱり赤丸だらけ。



「バッチリ合格取ってきたけど?」



不合格なんてありえない、そんな顔をしている。


そうだよね……ただの面倒くさがりやで本当は勉強もできちゃうんだから。



───と、いうことは。

わたしは神風くんのお願いを聞かなきゃいけないわけで。



「……えっと、」


「なんでもお願い聞いてくれるんでしょ?」



神風くんはトントンとつま先を地面につけて、上靴から外靴へと履き替えてから、振り向いてわたしを見た。