話は7月某日のことだ。

月那は実家暮らしだが、ひとり暮らししている優生の家に泊まることもしばしば。その日も優生の家で朝を迎えた。

夏めく日差しを背に、起床後のストレッチを終えた月那は首筋に流れる汗を襟元で拭う。

艶やかさが少々。優生はそんな月那に見入っていた。


「おはよう、優生。朝ご飯準備するね」

「うん、ありがとう」


月那がモデルを始めたことは優生も知っている。

でも捜査上の関係者ではないので、月那の事情を完全にわかっていない。

それでも事情がない限り月那がモデルなんてやるわけない。なんの事件かは知らないが、月那が捜査中なことくらい優生にお見通しだった。


その優生の内心は一言でいうと、複雑だ。


月那は桜蘭と谷口組の抗争に舞い込まれて数日間意識を失っていたことがある。

月那のやりたいことなのはわかってるけど、危険なことはしてほしくない。


しかしそれを口にしないのは、月那の自由を奪いたくないからだ。


そして朔夜がそばにいるから、心配しなくとも月那の身の安全は確保されるだろう。

だから不安になることは何もない。