月那は「ごめんね」とだけ残して慌ただしそうに控え室に向かっていった。
「月那ちゃん、走ってて珍しいね」
中性的な声に振り向くと、にっこりと温和な笑みを浮かべた男性が俺の横に並んだ。
癖のある黒の短髪、優しい雰囲気を纏う垂れ目。そして身長180センチを超えるスラリとした長身。
この人、知ってる。簗瀬ハクだ。
ティーンの中で一番話題になってる俳優だ。たしか今度映画の主演を飾るとか。
「月那ちゃんと似てるね。兄妹とか?」
「はい、月那の兄です……」
「お兄さんでしたか。僕は簗瀬ハクです」
「あ、はい。存じ上げています」
「それは嬉しいな。ってかそんな固くならなくていいのに」
「いえ、それはさすがに……」
芸能人特有の圧倒的オーラにたじろぎながらもなんとか答える。
「お兄さんもスタイル良いね。モデルとかやったりしないの?」
「はは、お世辞はよしてください」



