困ったように笑って、私の頭を雑に撫でた後。
「じゃあな」と今度こそ彼の気配が遠ざかっていった。
「今のは、ずるい……っ」
駅でなんていうことをするんだ。
こんなのされたらまた会いたくなってしまうじゃないか。
嘆きたいことはたくさんあるのに、結局は“好き”という2文字に終着してしまう。
日に増していくこの気持ち。
それと同時に寂しさも募っていく。
……会えないのは仕方ないんだ。
寂しいって言ったら、迷惑かける。
だから別のことをして気を紛らわせよう。
⁑
☆
大学の講義まで時間が空いたので、大学の近くにある大きな本屋で暇をつぶすことにした。
最近は胡桃のおすすめの料理本とか、論文で使えそうな本とか、目当ての本を買うために覗いたりしている。
今日は欲しい本があるからそれを買おう。
そうして目当ての棚まで向かう途中、あるものに目を惹かれた。



