「出かける」

 ネイトが裸足のまま靴を履いた。クローゼットから、さっきとは別のジャケットに袖を通した。
 ……襟元を緩めているからか、ハイブランドな装いとあいまって、上流な遊びをしなれている人のように見える。
 貴族、て言葉が浮かんだ。
 
 
 私も慌てて立ち上がる。

「どちらへ?」
「ついてくれば、わかる」

 連れていかれたのは最上階のレストランだった。
 誰かと会食かな?
 キョロキョロしたいのを我慢してネイトの背中についていく。

 レストランだし、ネイトは客だから当たり前なんだけど。
 スタッフが彼のために道をあけ、頭を下げる。
 ネイトは鷹揚な笑みを浮かべながら、通り過ぎていく。
 その姿、威風堂々。
 見惚れてしまう。

 ほう……という息を吐き出す音が聞こえたので慌てて自分の唇を噛みしめたら、他のテーブルからだった。

 彼をハートマークだらけで見つめた視線は、同行者の私を上から下まで観察する。
 星付きレストランに入っても、咎められない服に着替えさせられたことに内心感謝した。