キュイ

 キュイ

 翼竜の鳴き声が空に響く。

 あたしは白騎士団の馬列の最後尾。兵站馬車に囲まれた一角にある四頭立ての馬車に、白騎士団の女性騎士と共に乗って。

 いちおうこの二人の女性騎士、クラウディアとコルネリアはあたしの護衛? との事だった。

 基本、聖女は魔獣討伐の切り札ではあるけれど先頭切って戦うわけじゃないらしい。

 そりゃあね? 

 数の少ない聖女を前線で使い潰すわけにもいかないよね?

 あたしに期待されてることは、ある程度魔獣を平定したあとその地を浄化すること。魔が入り込まないよう結界をはる事、などなどだ。
 もちろん重症な怪我人が出た場合の延命も含むけど。

 かすり傷ならポーションで治るし通常の医師班も当然随行している。

 あたしに期待されるようなそんな重症患者はほんとうは出ないにこしたことはないのだけれどね。



 アリアに出会った次の週になり、いよいよ魔獣討伐の従軍が始まるとあってあたしもちょっと緊張してたけど、今はまだまったりかな?

 女性騎士二人はあんまりお喋りしてくれないけどしょうがない。

 って。黙ってるのもつらいなぁ。

 そんなこと考えて。



 お昼休憩になったところであたしも食事の配膳のお手伝い。

 目的の魔の森まではこのペースで丸一日かかるらしい。今のうちに英気を養ってもらわなくっちゃね。

 大きいお鍋で温めたシチューとパンっていう食事だけど、もうシチューは王宮の食堂で用意してきたっぽい。あとは温めるだけだったからけっこう簡単だった。

 騎士様達はみな自分専用のカトラリーを携帯してるので、あとはお皿にシチューをよそってあげるだけ。

 流石にこんなアウトドアで各自自分でよそわせたら衛生面で問題がでるからね。配膳係がちゃんと必要みたい。

 全員に行き渡ったかな? って思ったところで。

 最後にやってきたのはフェリス団長とそして、アーサー。

「ありがとうマリカ。貴女みたいな女性がよそってくれたシチューは美味しさも何倍にもなりそうだ」

 そう、甘い言葉を話すのは、白騎士団副団長のアーサーだった。

(はうう、相変わらず恥ずかしい)

 あたしがそう赤くなってるとフェリスさま、

「ふむ。マリカはアーサーみたいなのが好みだったか……」

 そうぼそりと言った。

 あたしは恥ずかしくって頭をぶんぶん振ってとりあえず否定してみせる。

 もう、なんだかこの騎士団の男の人って、そんな色恋の話しかしないの!?

 まあでも前の聖女さまも騎士様と恋愛してお子をもうけたって話だったっけ?


 でもまあわからないでもないな。

 騎士様たちってみんなイケメンな人ばっかりだし。

 女の子なら憧れかもだし……。


 あ、あたしはまだよくわかんないけどね!


 に、してもね。

 あの薔薇園の王子様がまさか騎士様だったなんて。

 びっくりだよ。