私は、3年前、母を亡くした。

母は、最後まで気丈に病気と闘ったけれど、その努力は報われることなく、私たちの心の中へと居場所を変えた。

母を亡くしたことで、1番変わったのは父だった。

元々、お酒が好きだった父だったが、程々のところでお酒を取り上げる母がいなくなったことと、母を亡くした辛さから、酒に溺れるようになった。

素人が見ても依存症だろうということは分かる。

病院に連れて行ったところで、まじめに通うこともしないし、治す気もないので、良くなることは全くなかった。

自営で設計事務所をしていたけれど、アルコールの匂いをさせてお客さんとの打ち合わせに行ったり、納期に間に合わなかったりで、建築会社からの依頼はほとんどなくなり、それまでの蓄えをお酒につぎ込む日々が始まった。

私が、我が家の家計が火の車だと知ったのは、ちょうど1年前のこと。

親戚のおばさんが教えてくれた。
お金がなくなった父が、親戚一同にお金を借りて回っていることを。

公立高校は、授業料は無料とはいえ、教科書や修学旅行費などは必要になる。

何より、生活費がいる。

だから、私は定時制高校を選んだ。

自分の学費と、生活費と、できれば2つ下の弟の学費を稼ぎたい。

弟にはできれば大学にも行かせてやりたい。