地味で根暗で電信柱な私だけど、二十代で結婚できますか?

 すでにお昼のピークを過ぎておりフロアにいる客はほとんどいなかった。私と佐藤さんはフロアの隅で話をしていたのでレジからも見咎められることはない。

 もっとも店内に配置された防犯カメラがしっかりと死角をカバーしているのだが。

 きりっとした佐藤さんに見惚れていると彼の手が伸びて私の頬に指先が触れた。

「清川さん」

 壊れものを扱うように優しく彼は頬から唇へと指を滑らせる。私の唇の上で止まった指先から微かに彼の体温が伝わってきた。

 抵抗なんてできない。

 彼は触れて欲しくない相手ではなかった。むしろ逆だ。

 佐藤さんの声に熱がこもる。

「俺、清川さんのこと好きです」
「……!」

 今度は私が驚く番だった。

 とくんと一段階高く心臓が跳ねる。とくとく、とくとくと心音が加速していった。比例するように私の体温が熱くなってくる。

 え、だって私、可愛くないよ?

 美人でもないし。

 電信柱だし。

 それに地味で根暗だし。

 彼に好かれない理由なら幾らでも出てくるのに好かれる理由が一つも出てこない。

 そんな自分が情けなくて堪らなくなるのに佐藤さんは慈しむような眼差しで私を見つめてくる。