リアル彼氏

まさか貴也から話しかけてくることがあるなんて思っていなくて、言葉が出てこない。


「なんでそんなに緊張してんの?」


貴也は不思議そうに首をかしげてあたしを見ている。


だってあたしは貴也に振られたじゃん……。


そう言いたいのをグッと押し込めた。


もしかしたらあの時のことは忘れて、友達になれるかもしれない。


そんな淡い期待が胸に膨らんでいく。


そうなると、こんなにボーッとしている暇はなかった。


あたしは慌てて笑顔を見せた。


「楽しそうに見えるかな?」


「見えるよ。いつもニコニコしてる」


それはきっとゲームのおかげだ。


藍とのできごとをマリナに自慢することが、今のあたしの生きがいなのだから。


でももちろん、そんなことは口が裂けても言えない。


「なにか嬉しいことでもあった?」


「べ、別になにもないけど……」


どうしよう、会話が続かない。


それ所か、貴也の顔を正面から見ることもできない。