リアル彼氏

「とにかく、別れてよね。じゃなきゃまた来るから」


女の子はそれだけ言うと、悠々として教室を出て行った。


先にクラスメートを味方につけたからか、その表情は余裕に満ちている。


「マリナ」


声をかけるとマリナが振り向く。


その顔は真っ赤に染まり、眉はつり上がっている。


鬼の形相のマリナに思わず絶句してしまった。


相当悔しかったのか、歯ぎしりが聞こえてきそうだ。


咄嗟に教室の中を見回して弘志君を探す。


しかし、本人はどこにもいない。


この状況に逃げ出したのかもしれない。


「帰る」


マリナは誰にともなく短くそう言うと、乱暴に鞄を掴んで教室を出て行ったのだった。