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2人はこのまま放課後デートを楽しむようで、駅方面へと歩きだした。


生徒たちの姿はまばらになり、途中と遮断機で立ち止まる。


肩を並べてほほ笑んでいる2人の後ろに、あたしはピッタリとくっついていた。


息を殺し、そのタイミングを見計らう。


そっとバッグから取り出したのは万能包丁だ。


黒い柄をしっかりと握りしめる。


狙うのはマリナの背中だけだった。


この際貴也はどうでもいい。


マリナさえこの世から消すことができれば、それでよかった。


この女は悪魔だ。


人を地獄へ追い込んでも笑っていられる、悪魔だ。


7両編成の電車がやってきたとき、あたしは行動に移した。


マリナの真後ろに立ち、包丁の先を押し当てる。


その感覚にマリナが気がつく前に、めいっぱい力を込めて刃先を肉に食い込ませたのだ。


服を貫き、皮膚に到達する感触。


そこからやわらかな肉を切り裂いていく感触。