噛みしめ過ぎて、唇から血があふれ出した。


鉄の味が口の中にあふれているが、気にならないくらい強い怒りを感じていた。


あたしはクラスの立場も転落してしまった。


唯一の貴也も失った。


残っているものなんてなにもない。


そう思った時だった。


手の中のスマホが震えて、視線を落とした。


画面を見てヒッと小さく悲鳴を上げる。


それは弘志君からの電話だったのだ。


あの行為の後、マリナへの復讐の続きをするために番号交換をしてしまったのだ。


しかし、今となれば弘志君は恐怖の対象だった。


あのマリナが弘志君と別れるために必死に動き回ったくらいなのだから、あたしがどうこうできる相手ではないのだ。


マリナの話だと、弘志君からの電話は2コールで出なければならないらしい。


すでに6回目のコール音が聞こえてきていた。