その時だった、マリナが近付いてきたのだ。


あたしの机を無表情で見つめる。


そして、そっと顔を近づけてきた。


「ありがとう」


え……?


マリナが口角を上げて笑っている。


「おかげで、ようやく弘志と別れられたよ」


なにそれ。


どういうこと?


「やっぱり見た目で付き合っちゃダメだね。貴也とは大違いだったよ」


ふぅーと、長くため息を吐き出すマリナ。


嫌な予感が胸に膨らんでいく。


「早く貴也とよりを戻したかったんだけどね、弘志がうるさくて。自分は浮気するくせにさ」


待って。


それじゃまるで、あたしがマリナと弘志君を別れさせてあげたみたいな言い方じゃない。


スッと血の気が引いて行く。


もしも、全部マリナの思惑通りだったとしたら……?


質問する前に貴也がやってきて、怪訝そうな表情を浮かべた。


「全部教えてあげる」


クスッと笑って美弥は言ったのだった。