「あとさ、覚えてるかどうかわからないけど、去年の体育祭のことなんだけど」


そう言われてあたしの心臓が跳ねた。


ちょうど昨日、日記を読み直したところだった。


不覚にも泣いてしまったことまで思い出し、恥ずかしくなる。


「あの時はごめん」


「え?」


「俺、あの時は付き合ってる彼女がいたんだ」


「そ、そうなんだね」


「でも、今はいないから」


貴也はどうしてあたしにそんなことを説明するんだろう?


なんて疑問は今はなしだ。


大きな期待が胸に膨らんでいく。


「だからさ、また放課後デートしない?」


あたしの耳元に顔を寄せて囁く。


それだけであたしの心臓は破裂してしまいそうだった。


「……わかった」


緊張状態にあるあたしは気の利いた言葉を言えるわけもなく、短く返事をしたのだった。