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当時のことを思い出したあたしは、知らない間に涙を浮かべていた。


慌てて指先で涙をぬぐい、日記帳を閉じた。


あのとき貴也には彼女がいた。


あたしもあれ以上のことはなにもできなかったのだ。


でも、今は事情が変わったんだ。


貴也はきっと彼女と別れた。


だからあたしを誘ってきたんだ。


そう考えると少し複雑な心境だったけれど、今度はあたしにもちゃんとチャンスがある。


しかも、すごく大きなチャンスだ。


これを逃がすわけにはいかない。


「しばらく、ゲームはお預けかな」


実際の恋愛に力を注ぐため、あたしはそう呟いたのだった。