焦ったそのときだった。


「ごめん」


静かにそう言われていた。


貴也は申し訳なさそうな表情をこちらへ向けている。


「他の女の子と遊ぶと、怒られるから」


貴也の言葉にあたしの頭は真っ白になった。


他の女の子と遊ぶと怒られる……。


それって、そういう意味だよね?


貴也には彼女がいるっていう……。


そこまで理解して、急に恥ずかしくなった。


全身から火が出るようだ。


どうしてその可能性を考えていなかったんだろう。


貴也ほどカッコ良かったら、すでに彼女がいても不思議じゃないのに。


それなのに、目の奥が熱くなってジワリと涙が滲んできた。


こんな状況で泣かれたら、貴也を困らせてしまう。


あたしは無理に笑顔を浮かべた。


「そ、そうだよね! ごめんね!」


何度も頷きながらそう言い、あたしはその場から逃げたのだ……。