驚いた表情で振り向く貴也。


あたしの心臓はドクドクと跳ねている。


でももう、後戻りはできない。


あとはデートに誘うだけなんだ。


「なに?」


「あの……体育祭、お疲れ様」


「あぁ。美弥もお疲れ」


貴也はニコリと笑って答えてくれる。


その笑顔に少しだけ緊張がほぐれた。


あたしはキュッと拳を握り締めると、すっと息を吸い込んだ。


「えっと、あの……もしよかったら、明日遊びに行かない?」


あたしの言葉に貴也は「えっ」と小さく声を上げ、それから首をかしげた。


困っている様子の貴也にまた緊張が舞い戻ってきた。


どうしよう。


こういうとき、どう言えばいいんだろう?


次の言葉を探して無言の時間が続く。


これ以上黙っていると、貴也は帰ってしまうかもしれない。