トラップ教室

「そんなことない」


早紀は下唇を噛んでうつむいた。


「そう? でもさぁ、佐竹の授業が始まると一緒になってヤジ飛ばしてるよね」


早紀が佐竹に対してだけは強気に出ていることを、あたしは知っていた。


きっと自分のストレスを発散しているんだと思う。


自分より弱い立場の先生を追い詰めることで、自分もクラスの一員だと思いたいのかも。


「なに? 悪い?」


早紀が震える声で言うので、あたしは肩をすくめた。


「別に悪いなんて言ってないじゃん。早紀イジメは終わるかもしれないけど、佐竹イジメはいつまで続くんだろね?」


担任イジメの存在は他のクラスでも知られることになっていた。


しかし、担任がイジメられる場合、味方が少ない。


イジメられる原因となったのがストーカー問題なのだから、余計だった。


今となってはそれが嘘だったのか本当だったのかわからない。


だけど、おそらく今では知らない生徒はいないんじゃないだろうか。


その日の午後は国語の授業があった。


ほぼ毎日行われる国語の授業。


だけどE組では教科書を出す生徒すらいなくなっていた。