今夜、この恋が壊れたら、

この人は、人を嫌う人じゃない。私はそれをわかっていたつもりなのに、ぜんぜんわかっていなかった。

ちゃんと伝えて、一緒に過ごせばよかったと今更思っても遅いのだろうか、遅すぎるのだろうか。




「もう遅い……?」
「遅いけど、遅くない」


「聞けてよかった」と言って彼はわらった。私はわらうと優しく細まる瞳に惹かれて、いまも惹かれ続けている。

この人がずっと大好きだった。



「終わりってやだよ」

私が弱々しい声で言うと、彼は私の頭に回した手に力を込めて、「俺は嫌じゃないよ」と言った。




「みんな、終わりが見えないから普通に、当たり前のように生きられる。その分終わりが見えるとこわいけど、終わりがあるからこそ輝いてるものがあると思う」

え、と一瞬思考が停止して、弾かれたように彼を見上げると、「だって、」と続けた。



「終わりが見えなかったら日々を大切にできないだろ?当たり前があったらいつも通り生きてただろ?終わりがわかったからお前と向き合えたんだよ」