「…せーっかく、優しい "がっ君" でいてあげたのに…」
「が、がっ君…?」
きっと今、わたしは情けない顔をしているに違いない。
名前を呼ぶ声はこれでもかと震えていて、身体の震えも、冷や汗も、止まる気配はなかった。
がっ君は、ゆっくりと、わたしの頭に手を置く。
その手が、驚くほどに冷たくて、「ひっ…」と声が漏れた。
「ねぇ?僕から逃げてどうするの?あの男のところにでも行く気?」
逃げ…る?
言っている意味がわからなくて、首を傾げる。
「そんなことさせない。させてたまるかッ…」
一体、どうしてこんなことになってしまったのだろうか…?
もう、何にもわからなくて、がっ君が何を言っているかも、何に怒っているのかも、どうして、こんな別人みたいになってしまったのかも…